非常食には乾パンやアルファ米などがありますが、噛む力が低下した高齢者にとっては、硬さやパサつきが負担になることがあります。
また、見た目がやわらかい食品でも、飲み込む力によっては食べにくい場合があるため、単に「やわらかい」という理由だけで選ぶのは適切ではありません。
高齢者向けの非常食は、本人が普段食べている食形態に合わせて、おかゆ・ムース食・栄養補助ゼリーを組み合わせるのが基本です。
特に災害直後に備えて、水や加熱なしで食べられるレトルトおかゆやムース食を最低1日分用意し、水で作れる長期保存おかゆや栄養補助ゼリーを追加すると対応しやすくなります。
この記事では、高齢者向けのやわらかい非常食を、保存期間、水・加熱の要否、食べやすさ、役割に分けて比較します。
安全に関する注意
やわらかい食品やゼリーであっても、すべての人が安全に食べられるとは限りません。水やお茶でむせる、食事中にせき込む、食後に声が濁るなどの症状がある場合は、医師、歯科医師、管理栄養士、言語聴覚士などに相談してください。
普段から食形態の指導を受けている人は、その指示と同じ区分の商品を選びましょう。
高齢者向けのやわらかい非常食おすすめ7選比較表
| 商品 | 種類 | 保存期間の目安 | 水・加熱 | 食べやすさの目安 | 主な役割 |
|---|---|---|---|---|---|
| アルファー食品 7年保存レトルト白がゆ | レトルトおかゆ | 7年 | 不要 | UDF・舌でつぶせる | 主食 |
| 尾西の白がゆ | アルファ米おかゆ | 長期保存 | 水またはお湯が必要 | UDF・歯ぐきでつぶせる | 主食 |
| マジックライス おかゆ | アルファ米おかゆ | 5年 | 水またはお湯が必要 | UDF・歯ぐきでつぶせる | 主食 |
| ユニフーズ7 | 介護食対応レトルト | 7年 | 不要 | スプーンでつぶして調整 | 主食・主菜 |
| エバースマイル やわらかムース食 | 常温ムース食 | 商品表示を確認 | そのまま食べられる商品あり | UDF・舌でつぶせるに準拠 | 主菜 |
| アイソカル ゼリー ハイカロリー | 栄養補助ゼリー | 製造日より12か月 | 不要 | えん下困難者用食品・許可基準Ⅱ | 栄養補助 |
| エネプリン | 栄養補助プリン | 1.5年 | 不要 | UDF・舌でつぶせる | 栄養補助 |
保存期間は製造時点からのメーカー公称期間を含みます。購入時には期間が経過しているため、届いた商品の賞味期限を確認してください。
また、栄養補助ゼリーやプリンは、主食や主菜の代わりではありません。食事量が少ないときの補助として、おかゆやムース状のおかずと組み合わせます。
高齢者向け非常食は何を基準に選ぶ?
普段食べている食形態と同じものを選ぶ
高齢者向けの非常食を選ぶときに最も重要なのは、本人が普段どのような食事を食べているかです。
普段から普通のご飯やおかずを食べている人と、ペースト食やムース食を食べている人では、適した非常食が異なります。
- 硬い食品だけが食べにくい:やわらかご飯、レトルトおかず
- 歯ぐきでつぶせる食品を食べている:おかゆ、やわらかい煮物
- 舌でつぶせる食品を食べている:ムース食、なめらかなおかゆ
- 飲み込む力にも問題がある:専門職の指導と同じ食形態
年齢だけを理由に、必要以上にやわらかい食事へ変更する必要はありません。本人が安全に食べられ、食べ慣れている形態を優先します。
UDFの区分を確認する
ユニバーサルデザインフード(UDF)は、食品の硬さや粘度を基準に、食べやすさを4段階で示したものです。
| UDF区分 | 噛む力の目安 | 飲み込む力の目安 |
|---|---|---|
| 容易にかめる | 硬いものや大きいものがやや食べにくい | 普通に飲み込める |
| 歯ぐきでつぶせる | 硬いものや大きいものが食べにくい | ものによっては飲み込みにくいことがある |
| 舌でつぶせる | 歯がなくても、やわらかければ食べられる | 水やお茶が飲み込みにくいことがある |
| かまなくてよい | 固形物は小さくても食べにくい | 水やお茶が飲み込みにくい |
区分が進むほど誰にでも安全になるわけではありません。飲み込む力には個人差があり、水分量や食べる姿勢、ひと口の量なども影響します。
水や加熱なしで食べられるか確認する
アルファ米のおかゆは軽く、長期間保存できますが、食べるために水またはお湯が必要です。
断水時に飲料水を調理へ使いすぎると、飲み水や服薬用の水が不足する可能性があります。
少なくとも災害発生直後の1日分は、次のような調理不要の商品を用意しておくと安心です。
- レトルトおかゆ
- 常温保存できるムース食
- 開封して食べられるやわらかいおかず
- 栄養補助ゼリー・プリン
おかゆだけで栄養を完結させない
おかゆは水分が多く、食べやすい一方で、普通のご飯より1食当たりのエネルギーが少なくなりやすい食品です。
おかゆだけを3食続けるのではなく、次のように組み合わせます。
- 主食:おかゆ、やわらかご飯
- 主菜:肉・魚・豆腐などのムース食
- 補助:高カロリーゼリー、プリン
- 飲み物:本人が普段飲んでいる形態の水分
塩分、たんぱく質、カリウム、水分などの制限を受けている人は、一般的な備蓄例をそのまま使用せず、主治医や管理栄養士へ相談してください。
1.アルファー食品・7年保存レトルト白がゆ
アルファー食品の防災用レトルト白がゆは、7年間常温保存できる長期保存食です。
- 水・加熱なしで食べられる
- UDF「舌でつぶせる」
- 国産米を使用
- スプーン付き
- 特定原材料等28品目不使用
アルファ米のように水を注いで待つ必要がなく、開封してすぐ食べられる点が大きなメリットです。
停電・断水直後の主食や、服薬用の水をできるだけ残したい家庭に向いています。
同じシリーズには「北海道産ほたて貝柱のおかゆ」もあり、こちらもUDF「舌でつぶせる」です。アレルギーがある場合は、白がゆと具入り商品の原材料を個別に確認してください。
向いている人
- 調理不要の主食を備えたい
- 舌でつぶせるおかゆを探している
- 交換回数を減らせる長期保存食が欲しい
2.尾西の白がゆ
尾西の白がゆは、乾燥状態で保管し、水またはお湯を加えて作るアルファ米タイプのおかゆです。
- 内容量:42g
- 必要な水:約203ml
- 出来上がり量:約245g
- スプーン・食塩付き
- UDF「歯ぐきでつぶせる」
- 特定原材料等28品目不使用
白がゆのほかに、梅がゆと塩こんぶがゆがあります。味に変化をつけられますが、塩分制限を受けている場合は、付属の食塩や塩こんぶを使用してよいか確認してください。
長期保存しやすく軽量ですが、1袋当たり約200mlの水を使用します。尾西のおかゆを3食備えるなら、調理用として約600mlの水が必要です。
断水直後の主食をすべてアルファ米にせず、調理不要のレトルトおかゆも組み合わせましょう。
向いている人
- 軽くて保管しやすいおかゆが欲しい
- 水やお湯を確保できる
- 白がゆ・梅がゆなどを組み合わせたい
3.サタケ マジックライス おかゆ
マジックライスのおかゆシリーズは、5年間保存できるアルファ化米です。
- 保存期間:5年
- お湯で約15分
- 水で約60分
- UDF区分2「歯ぐきでつぶせる」
- おかゆとやわらかご飯の2通り
- アレルギー物質28品目不使用
白がゆは1袋42gで155kcalです。水量を変えることで、約242gのおかゆまたは約162gのやわらかご飯にできます。
本人の食べる力に合わせて硬さを自由に変更するという意味ではありません。パッケージで指定された水量と作り方を守り、普段食べている形態に合うか事前に試してください。
向いている人
- おかゆとやわらかご飯を選びたい
- 水またはお湯を確保できる
- 5年保存の主食を備えたい
マジックライスの商品全体については、以下の記事でも詳しく紹介しています。
サタケのマジックライスはまずい?口コミ・作り方・賞味期限と販売店を調査
4.ユニフーズ7
ユニフーズ7は、介護食に対応した7年保存のレトルト非常食です。
- 賞味期限:7年
- 水・加熱不要
- トレー・スプーン付き
- スプーンでつぶして食形態を調整できる
- 食塩相当量は各メニュー2g以下
- 主食とおかずを組み合わせた9種類
カレーライス、ハヤシライス、玉子丼、鶏そぼろ玉子とじ丼などがあり、おかゆだけでは不足しやすい主菜を一緒に備えられます。
ただし、スプーンでつぶせば誰でも安全に食べられるという意味ではありません。本人の普段の食形態と合うかを確認してください。
また、施設向けの取り扱いが中心となる場合があります。個人で購入する場合は、販売単位、送料、通販在庫を確認しましょう。
向いている人
- 主食とおかずを一緒に備えたい
- 水や加熱を使いたくない
- 施設・事業所単位で介護食を備蓄したい
5.エバースマイル やわらかムース食
エバースマイルのやわらかムース食は、肉、魚、野菜などを食材ごとにムース状へ加工した介護食です。
- 常温保存可能
- UDF「舌でつぶせる」に準拠
- 具材ごとの見た目を残したムース食
- 調味液と混ぜながら、よりやわらかくできる
- そのまま食べられる商品あり
おかゆは主に炭水化物を補う主食ですが、ムース食なら肉や魚などを使った主菜を追加できます。
非常食専用の5年・7年保存商品とは異なり、日常的に食べながら買い足すローリングストック向きです。購入後は、個別商品の賞味期限と保存方法を確認してください。
温めると食べやすく感じる商品でも、災害時には電子レンジや湯せんが使えない可能性があります。平常時に常温でも食べられるか試しておくと安心です。
向いている人
- 普段からムース食を食べている
- おかゆ以外のおかずも用意したい
- 日常食と非常食を兼ねてローリングストックしたい
6.アイソカル ゼリー ハイカロリー
アイソカル ゼリー ハイカロリーは、少量でカロリーとたんぱく質を補えるカップゼリーです。
- 容量:66g
- エネルギー:150kcal
- たんぱく質:3.0g
- 脂質:7.9g
- 12種類の味
- 賞味期間:製造日より12か月
- えん下困難者用食品・許可基準Ⅱ
1個で150kcalを補えるため、災害時に食欲が落ち、おかゆやおかずを食べ切れなかった場合の補助候補になります。
ただし、これだけで1食に必要な栄養がすべて補えるわけではありません。主食や主菜を基本にして、足りない分を補う目的で使用します。
公式サイトでは、医師、歯科医師、管理栄養士、薬剤師、言語聴覚士などの指導を受けて使用するよう案内されています。
向いている人
- 少量で150kcalを補いたい
- カロリーとたんぱく質を一緒に補いたい
- 普段から同商品を食べている
味や種類については、以下の記事で詳しく紹介しています。
7.日清オイリオ エネプリン
エネプリンは、40gの小さなカップで110kcalを補える栄養補助プリンです。
- 容量:40g
- エネルギー:110kcal
- たんぱく質:0g
- 脂質:9.5g
- MCT:6g
- 賞味期間:1.5年
- UDF「舌でつぶせる」
食べられる量が少なく、66gのゼリーでも食べ切りにくい人にとって、40gという小ささが選択理由になります。
一方、たんぱく質は0gです。エネプリンだけに頼らず、本人の食事制限に合わせて、ムース状の肉・魚・豆腐なども組み合わせる必要があります。
たんぱく質制限を受けている場合でも、自己判断で適否を決めず、医師や管理栄養士へ相談してください。
向いている人
- 一度に食べられる量が少ない
- 40gで110kcalを補いたい
- たんぱく質を含まない補助食品を指示されている
おかゆ・ムース食・ゼリーの違い
| 種類 | 主な役割 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| おかゆ | 主食 | 米を食べ慣れている人が取り入れやすい | 商品によっては水が必要。おかずは別に用意する |
| ムース食 | 主菜・副菜 | 肉・魚・野菜をやわらかい状態で備えられる | 長期保存専用品とは限らない |
| 栄養ゼリー・プリン | 栄養補助 | 少量でカロリーを補いやすい | 主食や主菜の代わりにはならない |
どれか一種類だけを大量に買うのではなく、主食・主菜・補助食品として役割を分けることが重要です。
高齢者1人分・3日間の組み合わせ例
以下は、1日3回食事を取る場合の一例です。
| 備蓄品 | 3日分の目安例 | 役割 |
|---|---|---|
| 調理不要のレトルトおかゆ | 3食 | 断水直後の主食 |
| アルファ米のおかゆ | 3食 | 水を確保できた後の主食 |
| 本人が食べられる別の主食 | 3食 | 味と形態の分散 |
| ムース食・やわらかいおかず | 6~9食 | 主菜・副菜 |
| 栄養ゼリー・プリン | 3~6個 | 食事量が少ないときの補助 |
| 飲料水 | 本人の状態に応じて用意 | 飲用・服薬・調理 |
| とろみ調整食品 | 普段使用する量 | 飲み物の形態調整 |
これは全員共通の推奨量ではありません。普段の食事量、持病、服薬、塩分・たんぱく質・水分制限に合わせて調整してください。
非常食全体の主食数を計算したい場合は、以下の記事も参考になります。
高齢者の備蓄で食品と一緒に用意したいもの
- 入れ歯と入れ歯洗浄用品
- 普段使用しているスプーンや自助具
- とろみ調整食品
- 服薬用の飲料水
- ウェットティッシュ
- 使い捨て食器
- お薬手帳の写し
- 持病・アレルギー・食形態を書いたメモ
- 老眼鏡や補聴器の電池
避難所で家族以外の人が食事を支援する可能性もあります。「UDF舌でつぶせる」「飲み物にはとろみが必要」など、普段の食形態を紙に書いて防災リュックへ入れておくと伝えやすくなります。
普段トロミアップパーフェクトを使用している人は、災害時にも同じ商品と計量方法を再現できるようにしておきましょう。
トロミアップパーフェクトの使い方は?使用量・ダマにならない混ぜ方を実体験で紹介
平常時に一度試食しておく
災害発生後に初めて食べると、味や食感が合わず、せっかく備蓄していても食べられない可能性があります。
購入後は、同じ商品を一つ試して次の点を確認してください。
- 常温でも食べられるか
- 本人が食べ切れる量か
- 硬さや粘度が普段の食事と合うか
- むせやせき込みが起きないか
- 容器を本人または介助者が開けられるか
- 付属スプーンで食べやすいか
- 薬と一緒に使用して問題ないか
長期保存品だけで備蓄を固めず、日常的に食べるムース食や栄養ゼリーもローリングストックすると、食べ慣れた状態を保ちやすくなります。
よくある質問
乾パンは高齢者向け非常食になりますか?
普通に噛んで飲み込める人なら備蓄できますが、歯が弱い、入れ歯が合わない、唾液が少ない、飲み込む力が低下している人には適さない可能性があります。
乾パンだけにせず、おかゆやムース食など、本人が普段食べられる食品を用意してください。
おかゆなら飲み込む力が弱くても安全ですか?
一概にはいえません。おかゆは米粒と水分が混在し、口の中やのどで分離することがあります。
水やお茶でむせる人は、自己判断でおかゆを選ばず、医師や言語聴覚士などの指示に合った商品を使用してください。
栄養ゼリーだけを非常食にできますか?
栄養ゼリーは少量でカロリーを補うのに便利ですが、主食・主菜・副菜のすべてを置き換えるものではありません。
おかゆやムース状のおかずを基本にして、食事量が少なかったときの補助として備えます。
やわらかい非常食は何日分必要ですか?
家庭の食品備蓄は最低3日分、できれば1週間分が目安です。高齢者が普段から特別な食形態を必要としている場合は、一般的な避難所の食事を食べられない可能性があるため、本人専用の食品を多めに備えることも検討します。
とろみ剤も備蓄したほうがよいですか?
普段からとろみ剤を使用している人は、非常時も同じ商品を使えるように備蓄するのが基本です。
商品によって必要量やとろみが付くまでの時間が異なります。非常時に別の商品へ急に変更せず、使い慣れた商品、計量スプーン、作り方のメモを一緒に保管しましょう。
まとめ|おかゆ・ムース食・ゼリーを役割別に備えよう
高齢者向けのやわらかい非常食は、一種類だけでなく、主食・主菜・栄養補助に分けて用意します。
- 主食:レトルトおかゆ、アルファ米おかゆ
- 主菜:常温保存できるムース食、やわらかいレトルトおかず
- 栄養補助:高カロリーゼリー、プリン
最初の1日分は水や加熱なしで食べられる商品を優先し、その後の食事用に軽量なアルファ米のおかゆを組み合わせると対応しやすくなります。
商品を選ぶときは、保存期間だけでなく、本人が普段食べている食形態、UDF区分、必要な水量、カロリー、たんぱく質を確認してください。
そして、災害時に初めて食べるのではなく、平常時に試食して、常温でも無理なく食べられる商品を備えておくことが大切です。
参考文献・参考URL
- 農林水産省|災害時に備えて食品の家庭備蓄を始めよう
- 農林水産省|スマイルケア食
- 日本介護食品協議会|ユニバーサルデザインフード区分
- アルファー食品|防災用非常食商品
- 尾西食品|製品規格
- サタケ|マジックライス おかゆシリーズ
- 非常食研究所|ユニフーズ7
- エバースマイル|ムース食の特長
- ネスレ ヘルスサイエンス|アイソカル ゼリー ハイカロリー
- 日清オイリオ|エネプリン
※商品仕様、保存期間、原材料、栄養成分は変更される場合があります。購入時にはメーカー公式情報と届いた商品のパッケージをご確認ください。


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