非常食をアルファ米、パン、カップ麺などの主食だけでそろえると、不足しやすいのが食物繊維です。
農林水産省によると、大規模災害時には野菜不足によってビタミン、ミネラル、食物繊維を取りにくくなり、便秘や口内炎に悩んだ事例があります。
食物繊維を補うには、保存用の野菜だけでなく、豆の缶詰、フルーツ缶、ドライフルーツ、もち麦ご飯なども利用できます。
この記事では、非常食で食物繊維を補う方法と、常温保存できる食品7種類を比較します。
この記事の結論
- 豆類、果物、穀類、乾物を組み合わせて備蓄する
- 断水直後に備えて、そのまま食べられる食品を優先する
- 乾物は軽量だが、戻すための水と熱源が必要になる
- 野菜ジュースの食物繊維量は商品によって異なる
- 食物繊維だけでなく、飲料水も十分に備える
非常食では食物繊維が不足しやすい
災害後に配られる食品や家庭で用意する非常食は、ご飯、パン、麺類などの主食に偏りやすい傾向があります。
これらはエネルギー源として重要ですが、精白米や一般的なパンだけでは、野菜、豆類、果物などから取れる食物繊維を十分に補えない可能性があります。
農林水産省は、災害時には野菜不足によって食物繊維などを取りにくくなり、便秘に悩んだという声があったと紹介しています。
非常食を準備するときは、主食の個数だけでなく、次の食品が含まれているかも確認しましょう。
- 豆類
- 野菜を使った常温保存のおかず
- 果物の缶詰やドライフルーツ
- もち麦や玄米を使ったご飯
- 海藻や乾燥野菜
非常食で野菜を補う方法は、以下の記事でも詳しく紹介しています。
食物繊維を補える常温保存食品7種類
食物繊維を含む食品でも、調理方法や必要な水の量は異なります。災害発生直後に使いやすい食品と、ライフラインが復旧してから使いやすい食品を分けて備えることが大切です。
| 食品 | そのまま食べられるか | 水・熱源 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 豆の缶詰・パウチ | 商品による | 基本的に不要 | 食物繊維とたんぱく質を補いやすい |
| ひじき煮・五目豆など | 食べられる商品が多い | 基本的に不要 | おかずとして取り入れやすい |
| フルーツ缶 | 食べられる | 不要 | 果物と水分を一緒に取れる |
| ドライフルーツ | 食べられる | 不要 | 軽量で持ち運びやすい |
| ナッツ類 | 食べられる | 不要 | エネルギーも補いやすい |
| もち麦・玄米入り保存ご飯 | 商品による | 商品による | 主食から食物繊維を補える |
| 乾燥野菜・海藻 | 戻す必要がある | 必要 | 軽量で場所を取りにくい |
保存方法や調理方法は商品によって異なります。購入時には賞味期限だけでなく、「開封後そのまま食べられるか」「戻すための水が必要か」も確認してください。
豆の缶詰・パウチ
大豆、ひよこ豆、ミックスビーンズなどの缶詰やパウチは、食物繊維とたんぱく質の両方を補いやすい食品です。
水煮タイプには開封してそのまま食べられる商品もあり、調理用水や熱源を使えない場面で役立ちます。サラダ用として販売されている蒸し豆も、常温保存できる商品なら備蓄候補になります。
ただし、商品によって開封後の加熱が必要な場合があります。パッケージにある召し上がり方を確認しましょう。
ひじき煮・五目豆・きんぴらなどのレトルト総菜
ひじき煮、五目豆、きんぴらごぼうなどのレトルト総菜は、ご飯に合わせやすく、食物繊維を含む副菜を追加できます。
開封してそのまま食べられる商品なら、皿や鍋を使わず、パウチから直接食べることも可能です。
注意したいのは塩分です。非常食は味付けの濃い商品が続く可能性があるため、栄養成分表示の食塩相当量も比較しましょう。
フルーツ缶
みかん、桃、パインなどのフルーツ缶は、果物と水分を一緒に取れる食品です。調理せずに食べられ、甘い食品として気分転換にも使えます。
備蓄するときは、缶切りが不要なプルトップ式を選ぶと扱いやすくなります。大きな缶は開封後に食べ切れない可能性があるため、家族の人数に合った容量を選びましょう。
シロップを含むため糖質も確認し、特に食事制限がある人は普段の指導内容に合った商品を選んでください。
ドライフルーツ
レーズン、プルーン、干しあんずなどのドライフルーツは、軽量で常温保存しやすく、非常持ち出し袋にも入れやすい食品です。
少量でも食べられる一方、水分が少なく糖分が凝縮されています。一度に大量に食べるのではなく、飲料水と一緒に少しずつ取り入れましょう。
商品によって砂糖や油が加えられているため、原材料表示も確認します。
ナッツ類
アーモンド、くるみ、ミックスナッツなどは、食物繊維に加えてエネルギーも補いやすい食品です。小袋タイプなら、開封後に食べ切りやすく、衛生的に分けやすい利点があります。
ただし、硬いため、幼児や噛む力・飲み込む力が低下した人には適さない場合があります。ナッツ類のアレルギーにも注意が必要です。
もち麦・玄米入りの保存ご飯
もち麦、玄米、雑穀などが入った常温保存ご飯を選ぶと、主食から食物繊維を補えます。
パックご飯は電子レンジや湯せんを前提とする商品があるため、非常時に常温で食べられるかを確認してください。アルファ化された商品は長期保存しやすい一方、戻すための水と待ち時間が必要です。
白飯と味付きご飯だけでなく、穀類の異なる主食を組み合わせると、備蓄の種類も増やせます。
乾燥野菜・海藻
切り干し大根、乾燥わかめ、乾燥きのこ、とろろ昆布などの乾物は、軽量で保管場所を取りにくい食品です。
みそ汁やスープに加えれば、普段の食事にも使えるため、ローリングストックに向いています。
一方、乾燥野菜の多くは戻すための水が必要です。断水直後に使う食品ではなく、水や熱源を利用できる段階で使う備蓄として考えましょう。
野菜ジュースで食物繊維は補える?
野菜ジュースは常温保存できる商品が多く、災害時の野菜不足に備える選択肢になります。ただし、野菜ジュースなら必ず食物繊維を十分に取れるわけではありません。
製造方法や原材料によって、食物繊維の含有量は異なります。購入するときは「野菜何個分」といった表示だけで判断せず、栄養成分表示の食物繊維量を確認しましょう。
野菜ジュースだけに頼らず、豆類、果物、穀類、レトルト総菜などを組み合わせることが重要です。
非常食では食物繊維を1日何g取ればいい?
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人の食物繊維について、男性は1日20g以上、女性は1日18g以上が一つの目安として示されています。年齢によって目標量は異なります。
ただし、この数値は健康な人が普段の食生活で目標とする習慣的な摂取量です。災害時の一食ごとに必ず達成しなければならない数値ではありません。
非常食を選ぶ際は、「この食品だけで必要量を取る」と考えず、主食・主菜・副菜を組み合わせ、数日間の偏りを少なくすることを優先しましょう。
災害時の便秘対策は食物繊維だけでは不十分
災害時の便秘には、食物繊維不足だけでなく、水分不足、運動不足、ストレス、トイレを我慢することなども関係します。
飲料水を十分に備える
食物繊維の多い食品を備えても、水分が不足していれば十分な対策になりません。
厚生労働省は、水分が不足すると、疲労感、頭痛、便秘、食欲低下などが起こりやすくなると案内しています。食料とは別に、必要な飲料水を確保しておきましょう。
トイレを我慢しない
避難所のトイレ環境や断水への不安から、水分摂取を控えたり、トイレを我慢したりすることがあります。
携帯トイレを備蓄しておき、トイレの不安を理由に水分を控えなくて済む環境を整えることも大切です。
無理のない範囲で体を動かす
長時間同じ姿勢で過ごすと、普段より活動量が減ります。安全を確認したうえで、立ち上がる、足を動かす、短い距離を歩くなど、可能な範囲で体を動かしましょう。
食物繊維を補う3日分の組み合わせ例
次の表は、食物繊維を含む食品を毎日の非常食に組み込む一例です。
| 日 | 朝 | 昼 | 夕 |
|---|---|---|---|
| 1日目 | 保存パン・ドライフルーツ | アルファ米・五目豆 | 保存ご飯・魚の缶詰・ひじき煮 |
| 2日目 | シリアル・フルーツ缶 | もち麦ご飯・レトルト総菜 | アルファ米・蒸し豆・スープ |
| 3日目 | 保存ビスケット・個包装ナッツ | 保存ご飯・きんぴらごぼう | アルファ米・豆の缶詰・乾燥野菜入りスープ |
実際に用意するときは、年齢、食事量、アレルギー、噛む力、持病などに合わせて調整してください。
水や熱源を使えない初日は缶詰やパウチ食品を優先し、利用できる設備が増えてから乾物やアルファ米を使うと、無理のない献立になります。
食物繊維を含む非常食を備蓄するときの注意点
平常時から食べ慣れておく
普段ほとんど食べない食品を、災害時に急に大量に食べるのは避けましょう。本人の体質に合わず、お腹の張りや不快感につながる可能性があります。
豆類や乾物などを普段の食事にも取り入れ、食べた分を補充するローリングストックがおすすめです。
栄養成分表示を商品ごとに確認する
同じ種類の食品でも、食物繊維、糖質、食塩相当量などは商品によって異なります。
「豆入り」「野菜入り」「全粒粉」といった商品名だけで判断せず、栄養成分表示に食物繊維量が記載されているか確認しましょう。
家族に合わせて食べ切れる量を選ぶ
缶詰や大袋の商品は、開封後に保存しにくくなる場合があります。冷蔵庫を使えない状況も想定し、一度に食べ切れる容量や個包装の商品を選びましょう。
噛む力やアレルギーを確認する
ナッツや硬いドライフルーツは、幼児や高齢者、噛む力・飲み込む力が低下した人に適さないことがあります。
豆、果物、ナッツなどのアレルギーにも注意し、購入時と実際に食べる前の両方で原材料表示を確認してください。
非常食の食物繊維に関するよくある質問
食物繊維のために野菜だけを備蓄すればいいですか?
野菜だけに限定する必要はありません。豆類、果物、もち麦や玄米などの穀類、海藻、乾物からも食物繊維を補えます。
保存性、調理方法、必要な水量を考え、複数の食品を組み合わせましょう。
食物繊維入りの栄養補助食品だけでも大丈夫ですか?
栄養補助食品は不足分を補う選択肢になりますが、それだけですべての食事を置き換えることはおすすめできません。
主食、主菜、副菜を基本にし、食物繊維入りの飲料やゼリーは補助として利用しましょう。
乾燥野菜は非常食に向いていますか?
乾燥野菜は軽く、常温保存しやすい点では非常食に向いています。ただし、戻すための水や加熱が必要な商品もあります。
断水直後用にはそのまま食べられるパウチ食品を備え、乾燥野菜は水と熱源を使える段階用として備えるのが現実的です。
便秘になったら食物繊維をたくさん食べればいいですか?
食物繊維だけを急に増やすのではなく、水分摂取や活動量、トイレ環境も合わせて見直します。腹痛、嘔吐、強い膨満感などがある場合や、症状が続く場合は、医療従事者へ相談してください。
まとめ
非常食で食物繊維を補うには、野菜だけでなく、豆類、果物、穀類、乾物などを組み合わせることが大切です。
特に、豆の缶詰やパウチ、レトルトのひじき煮や五目豆、フルーツ缶は、水や熱源を使わずに食べやすいため、災害発生直後の備蓄に向いています。
ドライフルーツ、ナッツ、もち麦ご飯、乾燥野菜なども役立ちますが、硬さや水分量、調理方法を確認しましょう。
災害時の便秘対策は、食物繊維だけでは完結しません。飲料水、携帯トイレ、無理のない運動も含めて備えることが重要です。
普段から食べている食品を少し多めに購入し、栄養成分表示を確認しながらローリングストックを続けていきましょう。


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