高齢の家族がいる家庭では、一般的な非常食を人数分そろえるだけでは不十分な場合があります。
噛む力や飲み込む力が弱くなっている人にとっては、乾パンや水分の少ないパン、硬いおかずなどが食べにくいこともあるためです。また、持病による食事制限や服薬がある場合には、その人に合った食品を普段から準備しておかなければなりません。
高齢者の非常食は、年齢だけで一律に決めるのではなく、普段の食事、食べる力、健康状態に合わせて選ぶことが重要です。
この記事では、高齢者が食べやすい非常食の選び方と、3日・1週間・2週間分の備蓄量について解説します。
この記事の結論
- 普段と同じ硬さ・形態の食品を基本にする
- おかゆ、やわらかいおかず、スープ、栄養補助食品を組み合わせる
- 元気な人は最低3日分、できれば1週間分を用意する
- 介護食や特殊食品が必要な人は2週間分も検討する
- 購入後は平常時に一度食べ、無理なく食べられるか確認する
高齢者の非常食は何を選べばいい?
高齢者の非常食は、本人が普段から食べている食品を基準に選ぶのが基本です。
高齢であっても通常のご飯やおかずを問題なく食べられる人なら、必ずしも介護食だけを用意する必要はありません。一方、普段からおかゆ、刻み食、やわらか食、とろみを付けた飲み物などを利用している人には、災害時も同じ食形態を維持できる備えが必要です。
農林水産省は、高齢者向けの備蓄例として、レトルトやアルファ米のおかゆ、缶詰、レトルト食品、フリーズドライ食品、即席スープ、栄養補助食品などを挙げています。
通常のアルファ米については、以下の記事でも商品ごとの特徴を比較しています。
高齢者向け非常食を選ぶ5つのポイント
普段の食事と同じ硬さか確認する
まず確認したいのが、食品の硬さと食べやすさです。
普段から通常食を食べている人、歯ぐきでつぶせる食品を食べている人、舌でつぶせる食品が必要な人では、適した非常食が異なります。
介護食品を選ぶ場合は、パッケージに表示されているユニバーサルデザインフード(UDF)などの区分が目安になります。ただし、区分だけで自己判断せず、普段利用している食品と同じ段階のものを選びましょう。
温めなくても食べられるものを選ぶ
災害時には、電気やガスが止まる可能性があります。温めた方がおいしい食品だけでなく、常温でも食べられる食品を含めておくと安心です。
レトルトのおかゆ、開封してそのまま食べられるおかず、栄養補助ゼリーなどは、熱源が使えない状況でも利用できます。
水なしで食べられる非常食についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
少量でも栄養を補いやすいものを選ぶ
災害時は、慣れない環境や体調の変化によって食欲が低下することがあります。食事量が少なくなりやすい人には、少量でもエネルギーやたんぱく質を補いやすい食品を用意しておきましょう。
主食だけに偏らないよう、魚や肉のやわらかいおかず、豆類、乳製品系の栄養補助食品などを組み合わせます。
非常食でたんぱく質を補う方法は、以下の記事も参考にしてください。
水分を取りやすい食品も用意する
水分不足は高齢者にとって特に注意したい問題です。飲料水だけでなく、おかゆ、スープ、ゼリー飲料など、水分を含む食品も組み合わせると摂取しやすくなります。
ただし、むせやすい人にとって、水やお茶のようなさらさらした液体が必ずしも飲みやすいとは限りません。普段からとろみ調整食品を使っている場合は、使い慣れた商品も一緒に備蓄しておきましょう。
持病や食事制限に合っているか確認する
高血圧、糖尿病、腎臓病、食物アレルギーなどがある場合は、一般的な非常食が本人に適さない可能性があります。
塩分、糖質、たんぱく質、カリウム、アレルゲンなど、普段確認している項目を非常食でも確認してください。医師や管理栄養士から食事指導を受けている場合は、その内容を優先します。
薬の名前、服用量、食事制限の内容、利用している特殊食品の商品名を紙に記録し、防災用品と一緒に保管しておくことも大切です。
高齢者が備えておきたい非常食
| 食品 | 特徴 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| レトルトのおかゆ | 水分が多く、常温でも食べられる商品がある | 粒の大きさと普段の食形態 |
| アルファ米のおかゆ | 長期保存しやすい | 必要な水量と待ち時間 |
| やわらかいレトルトおかず | 肉や魚、野菜を補いやすい | 硬さの区分と塩分 |
| 魚・肉などの缶詰 | たんぱく質を補いやすい | 身の硬さ、骨、開け方 |
| スープ・みそ汁 | 水分を含み、温かくすると食べやすい | 塩分、必要な水と熱源 |
| 栄養補助食品 | 食欲がないときも栄養を補いやすい | 保存期間、栄養成分、飲み込みやすさ |
| 好物・食べ慣れた食品 | 精神的な負担があるときも口にしやすい | 常温保存の可否 |
レトルトやアルファ米のおかゆ
おかゆは、硬いご飯を食べにくい人の主食候補になります。レトルトタイプには開封してそのまま食べられるものがあり、水や熱源を節約できるのが利点です。
アルファ米のおかゆは長期保存しやすい一方、調理用の水と待ち時間が必要です。断水を想定し、商品本体だけでなく必要量の保存水も一緒に備えましょう。
やわらかいレトルトおかず
主食だけでは、たんぱく質やビタミン、ミネラルが不足しやすくなります。常温保存できる肉・魚・野菜のレトルトおかずを組み合わせましょう。
噛む力が低下している場合は、食品の見た目だけで判断せず、パッケージの硬さ区分を確認します。
スープや栄養補助食品
食欲が低下したときのために、スープ、ゼリー、飲料タイプの栄養補助食品なども候補になります。
ただし、栄養補助食品だけですべての食事を置き換えるのではなく、通常の食事を補う食品として取り入れるのが基本です。商品によって栄養成分や飲み込みやすさが異なるため、購入前に表示を確認してください。
高齢者の非常食は何日分必要?
通常の家庭備蓄では、最低3日分、できれば1週間分を用意することが推奨されています。
一方、高齢者や慢性疾患のある人など、食事に特別な配慮が必要な場合は、普段使っている介護食や特殊食品が災害後に入手しにくくなる可能性があります。厚生労働省は、このような人について2週間分の備えがあると安心と案内しています。
| 本人の状態 | 備蓄期間の考え方 | 1日3食で用意する主食数 |
|---|---|---|
| 通常食を問題なく食べられる | 最低3日、できれば1週間 | 3日分9食、1週間分21食 |
| 決まった介護食・特殊食品が必要 | 2週間分も検討 | 2週間分42食 |
表の数は主食を1日3回食べる場合の単純な目安です。実際には、本人の普段の食事回数や食事量に合わせて調整してください。
高齢者向け非常食の3日分組み合わせ例
高齢者1人分を想定した、簡単な組み合わせ例です。
| 日 | 朝 | 昼 | 夕 |
|---|---|---|---|
| 1日目 | おかゆ・栄養補助食品 | やわらかいご飯・魚のおかず | おかゆ・野菜のおかず・スープ |
| 2日目 | 食べ慣れた主食・果物加工品 | やわらかいご飯・肉のおかず | おかゆ・豆のおかず・スープ |
| 3日目 | おかゆ・栄養補助食品 | やわらかいご飯・魚のおかず | おかゆ・野菜のおかず・好物 |
これは一般的な例であり、噛む力や飲み込む力に問題がある人へ、そのまま適用できる献立ではありません。本人が普段食べている形態に合わせて、食品を置き換えてください。
野菜不足への備えは、以下の記事でも解説しています。
高齢者の非常食として避けたいものは?
特定の食品を高齢者全員が避ける必要はありません。ただし、本人の状態によっては次の食品が食べにくいことがあります。
- 硬くて噛み砕きにくい乾パン
- 口の中の水分を奪いやすいビスケットやパン
- パサパサしてまとまりにくい食品
- のりや葉物など口の中に張り付きやすい食品
- 大きな具や骨が入った食品
- 塩分が多く、強い喉の渇きを感じやすい食品
- 普段食べたことがない介護食
やわらかそうに見えるパンでも、口の中でまとまりにくく、飲み込みづらいことがあります。本人が安全に食べられるか、平常時に確認しておきましょう。
購入した非常食は普段から試食しておく
非常食を購入したら、保管したままにせず、一度は本人に食べてもらいましょう。
- 自分でパッケージを開けられるか
- 付属のスプーンを使えるか
- 硬さや粒の大きさは合っているか
- 常温でも食べられるか
- 味付けが濃すぎないか
- 一袋を食べ切れるか
- 食後にむせや違和感がないか
問題なく食べられた食品を普段の食事にも取り入れ、食べた分だけ買い足すローリングストックにすると、賞味期限切れも防ぎやすくなります。
高齢者の非常食に関するよくある質問
高齢者には必ず介護食が必要ですか?
高齢という理由だけで、全員に介護食が必要になるわけではありません。普段から通常食を問題なく食べている人は、食べ慣れた常温保存食品を中心に備えられます。
介護食を利用している人は、災害時も普段と同じ硬さや形態の食品を用意しましょう。
おかゆだけを備蓄すれば十分ですか?
おかゆは主に炭水化物と水分を補う食品です。おかゆだけでは栄養が偏るため、肉・魚・豆などのおかず、野菜を含む食品、栄養補助食品などを組み合わせましょう。
高齢者の非常食は3日分で足りますか?
まずは最低3日分を確保し、可能であれば1週間分へ増やします。介護食や治療用の特殊食品など、代用品を入手しにくい人は2週間分も検討してください。
飲み込みに不安がある場合はどうすればいいですか?
普段利用している食形態や、とろみの程度を基準にします。災害時だけ別の食品や濃度に変更するのは避け、事前に医師、管理栄養士、言語聴覚士などへ相談しておくと安心です。
まとめ
高齢者の非常食は、年齢だけで決めるのではなく、本人の噛む力、飲み込む力、食事量、持病などに合わせて選ぶ必要があります。
通常食を食べられる人は、食べ慣れたレトルト食品や缶詰を中心に、最低3日分、できれば1週間分を備えましょう。介護食や特殊食品が欠かせない人は、入手困難になる可能性を考えて2週間分も検討します。
商品を購入したら、賞味期限まで保管するだけでなく、平常時に本人が試食することが大切です。無理なく開封できるか、常温でも食べられるか、安全に飲み込めるかまで確認し、その人専用の備蓄を整えておきましょう。


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