非常食の主食というとアルファ米や保存パンが定番ですが、食事に変化をつけられるパスタも備えておきたい食品の一つです。
ただし、非常食として販売されている長期保存パスタと、スーパーで購入できる一般的な乾麺では、必要な水量や調理時間が大きく異なります。
結論からいうと、断水や停電の影響が大きい災害直後には、水だけでも作れる長期保存タイプが便利です。一方、電気・ガスや水を確保できる在宅避難では、価格が安く普段から消費できる乾麺が役立ちます。
どちらか一方だけを大量に備えるのではなく、長期保存タイプと早ゆで乾麺を組み合わせると、調理環境や避難期間に対応しやすくなります。
- 非常食用の長期保存パスタと乾麺の違い
- 1食を作るために必要な水量
- お湯と水で作る場合の調理時間
- 断水・停電時に向いているパスタ
- 非常食用パスタを選ぶポイント
非常食のパスタは長期保存タイプと乾麺のどちらを選ぶ?
非常食用のパスタには、大きく分けて次の2種類があります。
- 水またはお湯を加えて戻す長期保存タイプ
- スーパーなどで購入できる一般的な乾麺
両者は同じパスタでも、想定されている使い方が異なります。
災害直後には長期保存タイプが便利
地震や台風の直後は、水道・電気・ガスが同時に使えなくなる可能性があります。限られた飲料水やカセットボンベを使って普通の乾麺をゆでるのは、意外に負担が大きい方法です。
サタケの「マジックパスタ」のような長期保存タイプなら、1袋当たり150mlの水またはお湯で調理できます。熱湯なら3分、水でも約20分で食べられるため、熱源を使えない場面にも対応できます。
袋が容器になり、スプーンも付いている商品なら、鍋や皿を洗うための水も必要ありません。
在宅避難には乾麺も利用できる
自宅にとどまる在宅避難で、水やカセットコンロを使える場合は、一般的な乾麺パスタも非常食になります。
乾麺は長期保存タイプより安く、スーパーやドラッグストアでも購入しやすいのがメリットです。普段の食事で使った分を買い足すローリングストックにも向いています。
ただし、乾麺にはゆでるための水、鍋、熱源、パスタソースが必要です。災害直後の主食を乾麺だけにするのは避け、調理環境が整ってから使う食品として備えるのが現実的です。
長期保存タイプと乾麺の併用がおすすめ
非常食のパスタは、どちらか一方に決める必要はありません。
- 災害発生直後:水だけでも作れる長期保存パスタ
- 水や熱源を確保した後:早ゆでタイプの乾麺
- 日常生活:乾麺を消費して買い足す
このように役割を分ければ、備蓄費用を抑えながら、断水や停電にも備えられます。
パスタだけでなく、ご飯・パン・麺をどのくらいの割合で備えるかは、以下の記事でも詳しく解説しています。
長期保存パスタと乾麺の違いを比較
長期保存タイプと一般的な乾麺の違いをまとめると、次のようになります。
| 比較項目 | 長期保存パスタ | 一般的な乾麺 |
|---|---|---|
| 保存期間 | 5年程度の商品がある | 商品ごとに異なる |
| 必要な水量 | 1食150ml程度の商品がある | 100g当たり約600mlが一つの目安 |
| お湯での調理時間 | 約3分の商品がある | 沸騰時間を含め約15~20分が目安 |
| 水での調理 | 対応商品なら可能 | 水に漬けるだけでは完成しない |
| ソース | 付属または味付きが多い | 別に用意する |
| 食器 | 袋を容器にできる商品がある | 鍋・皿・箸などが必要 |
| 価格 | 比較的高い | 比較的安い |
| ローリングストック | 可能だが費用がかかりやすい | 普段の食事で使いやすい |
農林水産省の資料では、乾麺パスタ100gを調理するときに必要な最低限の水量は約600ml、加熱時間は沸騰までを含めて約15~20分が目安とされています。
一方、サタケのマジックパスタは1袋に150mlの水またはお湯を使用し、熱湯なら3分、水なら約20分で調理できます。
製品や調理器具、水温、火力によって条件は変わりますが、水と燃料を節約したい状況では長期保存タイプが有利です。
長期保存パスタのメリット
水だけで作れる商品がある
長期保存パスタの大きなメリットは、水だけでも戻せる商品があることです。
停電やガス停止によりお湯を沸かせなくても、飲用できる水を用意できれば食べられます。水の場合はお湯より待ち時間が長くなりますが、燃料を消費しない点は災害時の強みです。
ただし、すべての長期保存パスタが水に対応しているとは限りません。購入前に、パッケージの作り方と必要な水量を確認しましょう。
少ない水量で1食を作れる
マジックパスタの場合、1袋に必要な水量は150mlです。農林水産省が示す一般的な乾麺100gの目安約600mlと比べると、使用する水を抑えられます。
4食を作ると仮定した場合、単純計算では次のようになります。
- 長期保存パスタ:150ml×4食=600ml
- 一般的な乾麺:600ml×4食=2,400ml
乾麺の水量は調理方法によって減らせる場合がありますが、非常時に初めて特殊な調理方法を試すのは失敗の原因になります。基本的には商品の表示どおりに調理できる備えを整えておきましょう。
食器と洗い物を減らせる
袋が自立して、そのまま容器として使える商品なら、食器を用意する必要がありません。
断水時には、食べるための水だけでなく、鍋や食器を洗う水も不足します。袋から直接食べられることは、平常時に想像する以上に大きなメリットです。
保存期間を管理しやすい
5年程度保存できる商品なら、頻繁に買い替える必要がありません。賞味期限を備蓄リストに記録しておけば、点検の回数も減らせます。
ただし、「5年保存」と書かれていても、購入日から必ず5年間残っているわけではありません。製造から流通、販売までに時間が経過しているため、届いた商品の賞味期限を確認してください。
長期保存パスタのデメリット
乾麺より価格が高い
長期保存パスタは、特殊な加工や長期保存用の包装、ソース、スプーンなどが含まれるため、一般的な乾麺より1食当たりの価格が高くなりやすい商品です。
家族全員の1週間分を長期保存パスタだけでそろえると費用がかさみます。最初の1~2日分を長期保存タイプにして、その後を乾麺やアルファ米などで補う方法が現実的です。
味や食感に好みが分かれる
長期保存タイプは、一般的なスパゲッティとは麺の形や加工方法が異なる場合があります。普段食べているパスタと同じ食感を想像して購入すると、違いを感じる可能性があります。
家族用に大量購入する前に、味の異なる商品を1袋ずつ試しておくと安心です。
小麦などのアレルギー確認が必要
パスタには一般的に小麦が使用されています。ソースによっては乳成分、卵、大豆、鶏肉などが含まれることもあります。
アレルギーがある場合はシリーズ名だけで判断せず、味ごとの原材料表示とアレルギー表示を確認してください。商品がリニューアルされる可能性もあるため、購入時のパッケージ確認が必要です。
乾麺パスタを非常食にするメリット
安く購入できる
一般的な乾麺は、長期保存用の商品より低価格でそろえやすいのが特徴です。家族の人数が多い場合でも、備蓄費用を抑えられます。
パスタソース、ツナ缶、トマト缶、コーン缶などを一緒に備蓄すれば、味の組み合わせも増やせます。
ローリングストックしやすい
普段からパスタを食べる家庭なら、乾麺を少し多めに買い、古いものから使って補充できます。
非常食専用品を賞味期限直前まで保管する方法に比べ、食品を無駄にしにくいのが利点です。
ローリングストックの始め方は、以下の記事でも説明しています。
非常食のローリングストックとは?やり方・必要量とおすすめ食品を解説
家族が食べ慣れている
非常時には、慣れない環境によって食欲が落ちることがあります。普段から使っている乾麺と好みのパスタソースなら、長期保存食を食べ慣れていない人でも選びやすくなります。
子どもがいる家庭では、辛味の少ないミートソースやナポリタンなど、普段食べられる味を確認しておきましょう。
乾麺パスタを非常食にするデメリット
水を多く使う
乾麺パスタを一般的な方法でゆでるには、まとまった量の水が必要です。
災害時に確保した水は、飲用だけでなく、アルファ米やスープの調理、歯磨きなどにも使用します。乾麺をゆでるために大量の水を使うと、生活用水が不足する可能性があります。
家族4人に必要な水の備蓄量は、以下の記事で計算しています。
燃料を消費する
乾麺は水を沸騰させ、一定時間加熱する必要があります。ゆで時間が長い商品ほど、カセットボンベの消費も増えます。
非常食用に乾麺を選ぶなら、通常のパスタよりも早ゆでタイプや細いパスタを選ぶと、加熱時間を短縮しやすくなります。
鍋と後片付けが必要
乾麺を作るには、基本的に鍋、コンロ、皿、フォークなどが必要です。断水中は洗い物が難しいため、鍋にソースを加えてそのまま食べる、皿にラップを敷くなどの工夫も必要になります。
ゆで汁を捨てる場所にも注意が必要です。排水設備が損傷している場合は、普段どおりに流せない可能性があります。
普通の乾麺パスタは水だけで作れる?
普通の乾麺は、水に漬けただけで安全に食べられる非常食ではありません。
乾麺をあらかじめ水に漬けて柔らかくし、最後の加熱時間を短くする方法はあります。しかし、水に漬けただけの状態と、加熱調理が完了した状態は別です。
水漬け後も加熱する
水漬けパスタを非常時に利用する場合でも、基本的には水を吸わせた後に加熱して仕上げます。
水に対応している長期保存パスタは、メーカーが指定する方法で水戻しできるよう加工されています。普通の乾麺に同じ調理方法をそのまま当てはめないでください。
長時間の常温放置に注意する
水を吸った麺は乾燥した状態とは異なります。特に気温の高い夏場に長時間放置すると、衛生面のリスクが高まります。
災害時は手洗いや調理器具の洗浄も十分にできない可能性があります。作る量は一度に食べ切れる分にして、作り置きや残り物の長時間保存は避けましょう。
飲用できる水を使う
パスタが水を吸収する調理方法では、使用した水が食品に残ります。調理には、保存水や安全が確認された水道水など、飲用できる水を使用してください。
浸水後の井戸水や、飲用できるか分からない水は調理に使わないようにしましょう。
非常食向けパスタを選ぶ5つのポイント
1.水だけでも作れるか
熱源を使えない状況を想定するなら、「水でも調理可能」と明記された商品を選びます。
水の場合の待ち時間も確認してください。お湯なら数分でも、水では20分程度かかる商品があります。
2.1食に必要な水量はどのくらいか
必要な水量は、備蓄全体に影響します。1食150mlの商品と600ml必要な乾麺では、家族分を作ったときの差が大きくなります。
商品を購入したら、パッケージ表面だけでなく作り方まで読み、必要な水量を備蓄リストに記録しておくと安心です。
3.調理時間は短いか
お湯を使う場合は、待ち時間だけでなく、沸騰させる時間も考慮します。乾麺なら、細麺や早ゆでタイプを選ぶと燃料を節約しやすくなります。
なお、記載された調理時間は水温や気温によって変わることがあります。冬場の冷たい水では、表示時間より長くかかる可能性も考えておきましょう。
4.ソースとスプーンが付いているか
麺だけを備蓄しても、ソースや調味料がなければ食べにくくなります。
長期保存タイプは、次の点も確認しましょう。
- 味付けやソースがセットになっているか
- スプーンやフォークが付いているか
- 袋を食器として使えるか
- 調理前に脱酸素剤を取り出す必要があるか
乾麺を備蓄する場合は、常温保存できるパスタソースも同じ食数分そろえます。
5.家族が食べられる味か
保存期間の長さだけで選ばず、辛さ、味の濃さ、アレルギー、1食の量を確認します。
同じ味を何食も続けると飽きやすいため、カルボナーラ、トマト系、和風などを組み合わせる方法もあります。
非常食のパスタは何食備蓄する?
パスタは便利ですが、すべての主食をパスタにする必要はありません。
例えば1人3日分の主食9食を備える場合は、次のように分けられます。
| 主食 | 備蓄例 |
|---|---|
| アルファ米・保存用おにぎり | 4食 |
| 保存パン・お菓子 | 3食 |
| 長期保存パスタ | 1食 |
| 早ゆで乾麺 | 1食 |
これは一例です。パスタが好きな家庭なら食数を増やしても構いませんが、必要な水や燃料も一緒に計算してください。
災害直後は調理不要の食品や少量の水で作れる食品を優先し、乾麺はライフラインの状況が落ち着いてから食べるようにすると、備蓄水と燃料を管理しやすくなります。
非常食のパスタに合わせたい食品
パスタだけでは炭水化物中心になりやすいため、次のような常温保存食品を組み合わせましょう。
- ツナ・サバ・鶏肉などの缶詰
- 豆や野菜の缶詰
- レトルトスープ
- 常温保存できる野菜ジュース
- 粉チーズや小袋の調味料
缶詰を選ぶ場合は、缶切りが不要なプルトップ式が便利です。パスタソースがなくても、ツナ缶やトマト缶、塩などを組み合わせれば食べ方を変えられます。
非常食のパスタに関するよくある質問
普通の乾麺パスタは非常食になりますか?
はい。未開封で常温保存でき、水、熱源、鍋、ソースを用意できる場合は、乾麺パスタも非常食として利用できます。
ただし、災害直後は水と燃料が不足しやすいため、乾麺だけでなく調理不要の食品や水だけで戻せる長期保存食も備えてください。
乾麺パスタの賞味期限は何年ですか?
賞味期限はメーカーや商品、包装方法によって異なります。一般的な年数だけで判断せず、購入した商品の袋に記載された賞味期限を確認してください。
開封後は表示された期限まで品質が保たれるとは限りません。湿気や虫を防げる密閉容器に移し、早めに使い切りましょう。
水だけで作れるパスタはありますか?
あります。サタケのマジックパスタなど、水を加えて一定時間待つことで食べられる長期保存商品があります。
商品によって必要な水量や時間が異なるため、必ずパッケージの調理方法に従ってください。
乾麺は細いものを選んだ方がよいですか?
非常食としては、細麺や早ゆでタイプの方が加熱時間を短縮しやすく、燃料節約につながります。
ただし、細さだけで判断せず、袋に表示されたゆで時間を比較して選びましょう。
パスタソースは温めなくても食べられますか?
レトルトソースには、温めずに食べられる商品もありますが、すべての商品が同じとは限りません。「そのままでも食べられる」などの表示を確認してください。
加熱が必要な商品や要冷蔵の商品は、停電時の備蓄には向かない場合があります。
長期保存パスタだけで1週間過ごせますか?
必要な食数を確保すれば主食にはできますが、同じ味が続くと飽きやすく、栄養も炭水化物に偏ります。
アルファ米、保存パン、缶詰、スープ、野菜ジュースなどと組み合わせ、主食とおかずに変化をつけるのがおすすめです。
まとめ|災害直後は長期保存タイプ、在宅避難には乾麺を活用
非常食のパスタは、保存期間だけでなく、必要な水量、調理時間、熱源、食器の有無を確認して選ぶことが重要です。
- 長期保存タイプは少量の水で作れる商品がある
- 水対応の商品なら熱源がなくても調理できる
- 乾麺は安く、ローリングストックしやすい
- 乾麺は水・燃料・鍋・ソースが必要
- 非常食には長期保存タイプと早ゆで乾麺を組み合わせる
災害発生直後のために長期保存パスタを少量備え、在宅避難用として食べ慣れた早ゆで乾麺をローリングストックしておくと、費用と調理のしやすさを両立できます。


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